三井寺

天台寺門宗の総本山で、長等山中腹に広大な敷地を有する名刹、三井寺(みいでら)。正式名は長等山園城寺(ながらさんおんじょうじ)といい、近江八景の一つ「三井の晩鐘」でも有名。奈良時代、壬申の乱に敗れた大友皇子の霊を弔うために創建された古刹で、大津に都があった時代からの歴史を誇る名刹です。西国三十三所第14番札所。

大津に都があった時代からの歴史を誇る名刹

7世紀中頃に開創という三井寺。
三井寺と通称されるのは、境内に天智・天武・持統の三帝が産湯に用いたという霊泉が湧き、「御井(みい)の寺」と呼ばれたのに由来します。

近江大津宮(大津京)や古代北陸道、古代琵琶湖の海上輸送の要衝・大津(大きな港の意)に臨む地に建つ白鳳寺院だったわけです。

その古代寺院を9世紀に、教待和尚から譲られたのが円珍(智証大師)です。
比叡山延暦寺の第5代天台座主として天台宗の隆盛に努めた円珍は、修行した唐で手に入れた貴重な請来経典を三井寺にもたらしました。
10世紀末、比叡山延暦寺が円仁派と円珍派に分裂した際には、三井寺は円珍派の中心拠点となり、多くの仏像や仏画が安置され、日本四箇大寺の一つとして隆盛を極めました。

現在の国宝、重文の建築物は慶長年間の再建

三井寺は源氏・平家の対立や、山門派と寺門派の確執が原因で何度も焼き討ちにあっていますが、1595(文禄4)年には、時の関白である豊臣秀吉の怒りに触れて(原因は定かでありません)、「文禄の闕所」(ぶんろくのけっしょ)という厳しい沙汰を受けています。
闕所というのは、堂舎を破却することで、三井寺は廃寺の危機を迎えます。

その秀吉ですが、死の前日に、北政所(ねね)に三井寺の復興を遺言。
北政所、豊臣秀頼、徳川家康、毛利輝元らの尽力で、慶長の再興を果たします。

現在、境内には金堂、勧学院客殿、光浄院客殿という3棟の国宝建造物、重要文化財の仁王門、三重塔、鐘楼などが建ち並んでいますが、いずれも1600年〜1601年(慶長5年〜6年)頃の再建または移築です。
仏像ほか寺宝にも貴重な文化財が多数ありますが、残念ながら秘仏も多いので特別公開を待たねばなりません。

三井の晩鐘として有名な鐘楼と鐘も1602(慶長7)年の再建。
金堂横にあるのでお見逃しなく。

なお、三井寺の観音堂は西国三十三所第14番札所で、古くから観音信仰でも有名。

三井寺拝観ガイド

大門(仁王門)

三井寺・大門(仁王門)

三井寺は正式には長等山園城寺(おんじょうじ)といい、天台寺門宗の総本山。大門(仁王門)は、三井寺中院の表門で両脇の仁王像が山内を守護しています。入母屋造り、桧皮葺きの楼門で駐車場に面して(東側を向いて)建っています。参拝順路では、この門が入

釈迦堂

三井寺・釈迦堂

三井寺(園城寺)の大門(仁王門)近くにあるのが釈迦堂。豊臣秀吉の闕所(けっしょ=堂舎の破却)後、1621年(元和7)年、平安京の内裏(だいり)にあった清涼殿(天正年間造営)を下賜されて移築したものとの伝承もありますが定かでありません。現在の

護法善神堂

三井寺・護法善神堂

三井寺(園城寺)の護法善神堂は、1727(享保12)年に再建されたもので、大津市の文化財。堂内には檜(ひのき)の一本造りで国の重要文化財に指定される護法善神立像(ごほうぜんしんりゅうぞう/平安時代の作)が祀られています。護法善神は、鬼子母神

金堂

三井寺・金堂

大津市にある三井寺(みいでら)は正式には長等山園城寺(ながらさんおんじょうじ)といい、天台宗の総本山。金堂は1599(慶長4)年、豊臣秀吉の正室である北政所(ねね=高台院)により再建されたもので、国宝。数奇な運命をたどった三井寺の本堂、金堂

鐘楼(三井の晩鐘)

三井の晩鐘(三井寺・鐘楼)

「近江八景」のひとつに数えられる「三井の晩鐘」。「三井の晩鐘」で知られる鐘楼は、三井寺(正式名は園城寺)の中心、金堂の南東に建てられています。宇治の平等院、高尾の神護寺とともに「日本三銘鐘」のひとつ。日本三銘鐘のに数えられる鐘の音は、「残し

閼伽井屋

三井寺・閼伽井屋

三井寺(みいでら/正式名は園城寺)は天台寺門宗の総本山で、東大寺、延暦寺、興福寺と並んで日本四箇大寺にひとつに数えられる名刹。金堂西側に建つ閼伽井屋(あかいや)には天智天皇(中大兄皇子)、天武天皇(大海人皇子)、持統天皇(女帝)が誕生の際に

霊鐘堂(弁慶の引摺り鐘)

三井寺・弁慶の引摺り鐘

三井寺(園城寺)に残される弁慶の引摺り鐘は奈良時代の梵鐘で、国の重要文化財。寺伝によれば、俵藤太秀郷が三上山のムカデ退治のお礼に琵琶湖の竜神から譲り受け、それを三井寺に寄進したと伝えられています。弁慶伝説を残す奈良時代の梵鐘比叡山と三井寺の

一切経蔵

三井寺・一切経蔵

大津にある三井寺(園城寺)の一切経蔵(一切経を安置するための堂)は室町時代初期の建築で、1602(慶長7)年に毛利輝元により長門国(ながとのくに=山口県)の国清寺(洞春寺)から移築、寄進されたもの。国の重要文化財に指定されています。禅宗様な

唐院(大師堂 潅頂堂 三重塔)

三井寺唐院 唐門・大師堂

三井寺(園城寺)の唐院は、868(貞観10)年に朝廷から下賜された仁寿殿を移築し、入唐八家のひとり、円珍(智証大師/ちしょうだいし)が唐よりもたらした経巻や法具類をおさめ、伝法灌頂の道場としたのが始まり。唐門とその奥にある大師堂は江戸時代初

三井寺唐院・潅頂堂

三井寺唐院は開祖となる円珍(智証大師)の廟所として、もっとも神聖な場所。円珍(智証大師)が入唐求法の旅で持ち帰った経典類を納めたことにより、唐院の名が付いたのです。大師堂と四脚門にはさまれて建つ潅頂堂(かんちょうどう)は、密教を伝承する道場

三井寺唐院・三重塔

三井寺唐院三重塔は室町時代初期の建築で、1597(慶長2)年に秀吉が伏見観月橋下に移築した大和の比蘇寺(ひそでら=現在の世尊寺)の東塔を、1600(慶長5)年に徳川家康が三井寺に寄進したもの。国の重要文化財で、一層目の須弥壇には、木造釈迦三

毘沙門堂

三井寺・毘沙門堂

三井寺(園城寺)の観音堂 (西国三十三所第14番札所)北側に建つ小さなお堂が毘沙門堂。もともとは、1616(元和2)年、園城寺五別所のひとつ尾蔵寺の南勝坊境内に建立されたもの。国の重要文化財。毘沙門天像を安置する桃山風の小さな堂舎は国の重文

観音堂 (西国第十四番札所)

三井寺・観音堂

大津市にある三井寺(園城寺)の観音堂は西国三十三所観音霊場の第14番札所として、信仰を集めています。本尊の如意輪観音坐像は、衆生に財宝を与え、煩悩を破る仏様。平安時代作と伝えられ33年ごとに開扉される秘仏で国の重要文化財になっています。西国

観月舞台

三井寺・観月舞台

西国三十三所第14番札所の三井寺(園城寺)の観音堂を中心とする南院札所伽藍のひとつが観月舞台。建立は、幕末の1849(嘉永3)年。建立周辺の百体堂、鐘楼とともに滋賀県の文化財に指定されています。能『三井寺』の舞台は観月の名所有名な能『三井寺

事前に予約が必要な特別拝観

光浄院客殿

三井寺・光浄院

光浄院は、三井寺の山内で最も格式の高い子院で室町時代に山岡氏(甲賀郡の毛牧村を本拠地とした地侍で六角氏綱の下で「湖南の旗頭」となり、瀬田城を守った)によって建立された名刹。現在の客殿は豊臣秀吉の闕所(けっしょ=堂舎の破却)後の1601(慶長

勧学院客殿

三井寺・勧学院

三井寺(園城寺)の勧学院は学問所として、鎌倉時代の1239(延応元)年に創立された塔頭(たっちゅう)。狩野光信による華麗な障壁画が部屋を飾る客殿は国宝に指定されています。現在の勧学院客殿は豊臣秀吉の闕所(けっしょ=堂舎の破却)後の1600(

西国三十三所霊場間の距離・時間

13番・石光山石山寺(滋賀県大津市石山寺1-1-1) — (10km/30分) — 14番・長等山三井寺/園城寺(滋賀県大津市園城寺町246) — (14km/40分) — 15番・新那智山今熊野観音寺/観音寺(京都市東山区泉涌寺山内町32)
※距離と時間はルートや交通状況により変動するため、およその目安です

三井寺
名称三井寺/みいでら
Midera Temple
所在地滋賀県大津市園城寺町246
関連HP三井寺公式ホームページ
電車・バスで京阪石山坂本線三井寺駅から徒歩12分
ドライブで名神高速道路大津ICから約3.5km
駐車場園城寺駐車場(350台/有料)
問い合わせ三井寺(園城寺)TEL:077-522-2238
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

新熊野神社

熊野信仰盛んな1160(永暦元)年、後白河上皇が平清盛・重盛に命じて京に創建された神社が新熊野神社(いまくまのじんじゃ)。退位後に院政を敷いた際に、住まいとしたのが現在の京都市東山区に建つ法住寺周辺(法住寺殿)。その鎮守社として新熊野神社が

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