東北には18の活火山があり、気象庁の常時観測火山も11を数える火山密集地帯。岩手山は噴火予報レベル2(火口周辺規制)ですが、それ以外はレベル1(活火山であることに留意)となっています(2025年2月10日現在)。明治時代に山体崩壊した磐梯山など、ダイナミックな火山地形も数多いのが特徴です。
恐山|青森県
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:立山、白山とともに日本三大霊場に数えられる活火山
直径3kmの恐山カルデラのカルデラ湖が宇曽利山湖(宇曽利湖)で、その湖畔では噴気孔や温泉が多く、地獄や賽の河原のような光景が展開することから、霊場が誕生
朝比奈岳(873.8m)、円山(806.6m)、大尽山(827.4m)などは恐山カルデラの外輪山
カルデラ内北部、霊場・恐山の背後にそびえる剣山(402m)は、溶岩ドーム
火山の歴史:146万年前~68万年前に外輪山を形成した火山活動があり、剣山の溶岩ドームは8万年前に誕生
天明9年(1789年)に刊行された松井寿鶴斎の『東国旅行談』に「一陽の火おこり猛々焔々と燃え上がり」という記述があり、噴気の可能性を示しています
岩木山|青森県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:津軽富士と呼ばれる美しい成層火山
頂上部に直径800mの火口があり、それを埋めて現在の岩木山山頂など2個の溶岩ドームが誕生
火山の歴史:山頂を構成する溶岩ドームは1 万年より新しいと推測され、天明3年(1783年)の水蒸気爆発(噴火場所は鳥海山頂部火口列)では新火口が誕生、昭和53年に赤倉沢で活発な噴気活動が記録
八甲田山|青森県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:17以上の成層火山や溶岩ドームからなる火山群で、八甲田火山群と南八甲田火山群に大別
北八甲田火山群の最高峰である大岳南西山麓の酸ヶ湯~地獄沼付近には噴気孔が点在
火山の歴史:過去6000年間に北八甲田火山群で少なくとも8回の噴火活動を記録、最新の3回は大岳南西麓の地獄沼での噴火
有史以降の噴火の記録はありません
十和田|青森県・秋田県
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:先カルデラ成層火山群、十和田カルデラ、後カルデラ成層火山・溶岩ドームからなる火山
十和田湖はカルデラ湖で1万5000年前の火山活動で誕生
火山の歴史:7600年前の火山活動で御倉山溶岩ドームを形成
平安時代の延喜14年(915年)にも中湖で噴火があり、毛馬内(けまない)火砕流が発生しています
秋田焼山|秋田県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:直径7km、比高700mという小型の成層火山で、山頂部に頂部直径600mの山頂火口があり、焼山山頂はその南西縁
西麓に強酸性の玉川温泉があります
火山の歴史:2500年前に山頂部で栂森西溶岩ドームが形成
有史以降の噴火は鬼ヶ城や北面の爆裂火口、空沼からの泥流流出などで現在も活発な火山活動を継続
秋田駒ヶ岳|秋田県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:秋田駒ヶ岳は標高1637.1mの男女岳(おなめだけ)、男岳(おだけ/1623m)、女岳(めだけ/1513m)、横岳(1582.5m)などの総称で、阿弥陀池を取り巻く現在の山体は、カルデラ外輪山
火山の歴史:カルデラ形成後の活動は1万年~7000年前と、 4000年~1000年前に集中
昭和7年の噴火では、十余りの新火口が形成
昭和45年の噴火は、女岳山頂にある火口からのマグマ噴火で、旧火口の西縁からマグマが溶岩流として流出(大規模な火山砂礫地の大焼砂は、その痕跡)
鳥海山|秋田県・山形県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:標高2236m(新山山頂)のコニーデ火山
火山体の直径は東西約26km、南北約14kmという巨大なもので、美しい姿から出羽富士(山形県側)、秋田富士(秋田県側)と呼ばれ古来から信仰の対象にも
2つの二重式火山が複合したもので、侵食が進み鳥海湖を有する西鳥海カルデラと新しい溶岩地形の新山などのある東鳥海カルデラからなり、それぞれに中央火口丘と外輪山がある複雑な地形
火山の歴史:55万年~16万年前に火山の主体を形成、16万年~2万年前に西鳥海、2万年前以降に東鳥海を形成
2600年前、東鳥海山の山頂部が崩壊して岩屑なだれが発生、北に開く馬蹄形カルデラが誕生、象潟の流れ山などもこの時に生まれたものです
東鳥海山の中央火口丘、新山の溶岩ドームは寛政13年(1801年)の爆発で形成
八幡平|秋田県・岩手県
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:安山岩の成層火山群で、山上部は高原となり、火口湖の八幡沼などの湖沼が点在
火山の歴史:直近の噴火は7300年前で、有史以降の噴火はありません
岩手山|岩手県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル2(火口周辺規制)
内容:西岩手・東岩手の 2 つの成層火山か ら成る活火山で西岩手の山頂部には小規模なカルデラを形成(西岩手カルデラ)
爆発型噴火が特徴で、過去には溶岩流の流出もあり、岩手山焼走り溶岩流は観光名所になっています
火山の歴史:有史以降の噴火は、西岩手山大地獄谷(現在も活発な噴気活動)での小爆発1回のほかは、すべて東岩手山(有史以降の2回の噴火はマグマ噴火)
7000年前に東岩手火山の山頂部が崩壊し、山頂部には馬蹄形火口が形成
貞亨3年(1686年)の山頂噴火と享保16年~17年(1732年〜1733年)の山腹噴火は、ともにマグマ噴火です
気象庁は「西側にある大地獄谷からおおむね2kmの範囲で噴火による大きな噴石に警戒が必要」としています
栗駒山|岩手県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:安山岩の成層火山で、外輪山は南側だけが残され、その東端が最高峰の大日岳
剣岳は平坦な溶岩ドームで、噴気活動が盛ん
火山の歴史:11万年ほど前の火山活動で形成された火山で、有史以降の活動は、爆裂火口内での噴火(水蒸気噴火)、泥土噴出
鳴子|宮城県
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:直径7kmのカルデラ(輪郭は不鮮明)と中央の溶岩ドーム群からなる火山
酸性の火口湖・潟沼とその西側の溶岩ドームでは今も活発な噴気が上がっています
火山の歴史:潟沼西側の溶岩ドームは、1万2000ねんほど以前から活動を開始、周辺には鳴子火山から5400年前以降に噴出した火山灰も確認されています
地熱も高く2000年~3000年前に水蒸気噴火も発生
有史以来は、承和4年(837年)、潟沼周辺で水蒸気噴火の記録があります
蔵王山|宮城県・山形県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:玄武岩~安山岩の成層火山群
火山の歴史:現在の山容の骨格が形成されたのは40万年~10万年前の火山活動で、複数の噴火口から溶岩流が流出、熊野岳、刈田岳などが誕生
3万年前に山頂部に直径2kmのカルデラが形成され、そのなかにカルデラ火砕丘の五色岳を形成
五色岳は2000年前から活動を続け、火口湖・御釜が誕生
有史以降は、主に御釜を噴出口とする数多くの活動が記録されています(御釜の北東には新噴気孔も)
直近では明治28年の御釜での水蒸気噴火、大正7年の御釜沸騰
肘折|山形県
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:1万年ほど前に火山活動があったと推測される比較的新しい火山で、内径2km、外径3kmのカルデラを形成、カルデラの東端と中央部に温泉が湧出
火山の歴史:1万2000年前に活動を開始し、1万年ほど前に休息したと推測され、有史以来の火山活動は記録されていません(最新の噴火活動の年代は不明)
吾妻山|山形県・福島県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:山形・福島県境に連なる多数の成層火山や単成火山などからなる火山群(東西25km、南北 15km)
西吾妻火山、中吾妻火山、東吾妻火山に区分され、東吾妻火山の一切経山(いっさいきょうざん)周辺では今も火山活動が盛んで、五色沼、大穴、桶沼、吾妻小富士などの火口湖や火砕丘があります
火山の歴史:有史以降の噴火は、大穴火口とその周辺の爆発で、その南側〜東側に、噴気地帯があり、気象庁が観測機器を設置しています
直近では明治26年〜28年、一切経燕沢火口群で水蒸気噴火、昭和25年、昭和52年に一切経大穴火口で水蒸気噴火があります
安達太良山|福島県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:福島市の南西に位置し、南北に連なる成層火山群(東西9km、南北14km)
主峰の安達太良本峰の山頂部には西に開く巨大な沼ノ平火口(直径1.2km)があります
火山の歴史:1万年前からはマグマ噴火、水蒸気噴火の繰り返しで、2400年前のマグマ噴火が最新のマグマ噴出
記録のある噴火活動は、沼ノ平火口での明治以後の活動で、明治32年、明治33年の水蒸気噴火、平成10年〜15年には沼ノ平中央部で泥水の噴出が確認されています
磐梯山|福島県 【常時観測火山】
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:底径7~10kmの成層火山で、円錐形火山体が山体崩壊で現在の姿に
明治21年の大噴火100周年を記念して建てられたミュージアムが磐梯山噴火記念館
火山の歴史:明治21年7月15日に起きた磐梯山の水蒸気噴火にともなう山体崩壊と岩屑なだれで桧原湖などが誕生
沼沢|福島県
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:会津盆地の南西にある小型のカルデラ火山で、中央に直径2km以上の沼沢湖カルデラがあります(5000年前の噴火で沼沢湖カルデラが形成)
惣山(標高816.3m)、前山(835.4m)は、溶岩ドーム
火山の歴史:11万年前のプリニー式噴火(富士山の宝永大噴火はプリニー式噴火)に始まり、数万年間隔でプリニー式噴火とデイサイト溶岩ドームの形成を繰り返し、5000年前の噴火で沼沢湖カルデラが形成
有史以降の火山活動は記録されていません
燧ヶ岳|福島県・群馬県・新潟県
噴火予報:レベル1(活火山であることに留意)
内容:尾瀬沼から見上げる尾瀬のシンボル
比高700m、山頂に直径800mの火口を有する円錐形の成層火山
尾瀬沼は岩屑なだれの発生で誕生
火山の歴史:15~20万年前に活動を開始、その後、複数回のマグマ噴火の痕跡がありますが、有史以来は一度の水蒸気噴火のみで、それが最後の噴火となる天文13年(1544年)で、噴火の直前に山頂部の御池岳溶岩ドームが形成(噴火場所は御池岳)
噴火の危険は!? 「東北地方の活火山」18をチェック | |
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