徳良湖

徳良湖

山形県尾花沢市、延沢城跡近くにある農業用のため池が徳良湖(とくらこ)。第一次世界大戦後の米価高騰と人口増加を背景に、安定した水源の確保のために築かれた農業用の貯水池。『花笠踊り』、『花笠音頭』は、工事の際に歌われた土搗き唄(どつきうた)と踊りが起源です。農林水産省のため池百選にも選定。

大正10年5月27日に完成した灌漑用の池

それまでは湧水、天水に頼っていた一帯の農業用水ですが、水資源の安定化のため、魚屋兼料亭を営んでいた高宮常太郎(たかみやつねたろう=後に開業する尾花沢鉄道の専務)は、230haの開田の貯水池として築堤を計画。
大正8年9月に着工し、大正10年5月27日に完成。
周囲2.7km、面積26haのため池で、完成から今日まで尾花沢の農業生産を支えたのです(今も120haの水田を潤しています)。
大正15年8月16日には尾花沢駅と奥羽本線大石田駅の間に、米の輸送を主目的にして尾花沢鉄道が開業しています(昭和18年から山形交通尾花沢線になり、昭和45年9月10日廃止)。

池を一周する30分ほどのウォーキングコースも整備され、散策にも絶好。
4月下旬〜5月上旬には湖畔のソメイヨシノが見頃を迎え、5月中旬〜6月上旬にはツツジが、夏にはラベンダー湖畔を彩ります。
冬季はハクチョウやカモ類の飛来地になっています。

湖畔には尾花沢市ふるさと振興公社の経営する徳良湖温泉「花笠の湯」も営業し、日帰り入浴、食事が可能。

徳良湖の築堤工事で生まれた『花笠踊り』、『花笠音頭』

徳良湖
湖畔には「花笠踊り発祥の地」碑も

築堤工事には延べ7万人が従事しましたが、そこで生まれたのが、『花笠音頭』。
土搗き(どつき)とは、12kg~15kgという大きな石に1人1本ずつ縄を掛け、10人ほどで引っ張り、持ち上げては落とす土台を固めるための作業のこと。
リズムを取り、息を合わせないと怪我をするので、必然的にリズムと歌が生まれ、作業をする人にスゲ笠で風を送る仕草などが踊りになったのです(かぶっていたスゲ笠を使い即興で踊ることもあったとか)。

作業に集まったのは近隣の村々の若い男女。
日除けや雨除けになるスゲ笠を持参し、男性はモッコを担いで土を運び、女性は土を固める土搗きを行ないました。
当初はこの重労働をお囃子(はやし)に合わせて行ないましたが、やがて懸賞付新作歌詞が募集され、村人たちは仕事に作詞に張り切り、多くの歌詞が誕生したのです。
この労働歌が、完成までの間にも尾花沢本町をはじめ近郊農村の祝事の酒席で披露され、徐々に広まり、大正10年、尾花沢本町諏訪神社の秋まつりでは、土搗き唄にあわせて笠踊りが奉納されています。

尾花沢市には現在でも上町(かんまち)流、寺内(てらうち)流、安久戸(あくと)流、原田(はらだ)流、名木沢(なきさわ)流の5つ踊りが継承されていますが、それぞれの集落ごとに踊りが違うのも築堤工事に由来するから。

『花笠音頭パレード』が行なわれるようになったのは昭和38年から、『山形花笠まつり』は昭和40年にスタートしています。
徳良湖は令和3年に築堤100周年を迎えていますが、『花笠踊り』、『花笠音頭』も100周年ということに。

『花笠音頭』(代表的な歌詞)

揃ろた揃ろたよ 笠踊り揃ろた
秋の出穂より チョイチョイ
まだ揃ろた
ハァ ヤッショーマカショ

花の山形 紅葉の天童
雪を チョイチョイ
ながむる尾花沢
ハァ ヤッショーマカショ

目出度目出度の 若松様よ
枝も チョイチョイ
栄えて葉も茂る
ハァ ヤッショーマカショ

おらが在所ヘ 来てみてしゃんせ
米の チョイチョイ
なる木がおじぎする
ハァ ヤッショーマカショ

徳良湖
名称 徳良湖/とくらこ
所在地 山形県尾花沢市二藤袋
関連HP 尾花沢市観光物産協会公式ホームページ
電車・バスで JR大石田駅からタクシーで15分
ドライブで 東北中央自動車道尾花沢ICから約7km
問い合わせ 尾花沢市観光物産協会 TEL:0237-23-4567/FAX:0237-23-4568
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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