東北地方の名城は、奈良時代に大和朝廷の北方警備の拠点となった多賀城から、新政府軍と幕府軍(奥羽列藩同盟)の激戦地となった若松城まで、古代から近世までの多様な城があるのが特長です。中世に築かれ八戸氏の拠点となった根城、伊達政宗の居城・仙台城(青葉城)、東北唯一の現存天守・弘前城など、個性派の名城が揃っています。
青森県
青森県は、藩政時代に南部氏の所領だった南部地方(青森県西部)と津軽氏が支配した津軽地方(青森県東部)に2分されます。津軽地方には弘前藩と黒石藩があって、弘前藩の藩庁となったのが弘前城。現存12天守のひとつ、弘前城天守がシンボルとなっています。 そしてもうひとつ、南北朝時代の1334(建武元)年、南朝の拠点としての願いを込めて築かれたのが根城(ねじょう)です。
弘前城
弘前藩津軽氏4万7千石の居城。現在は弘前城公園となっていて、ゴールデンウィーク前後には日本屈指のお花見スポットとして賑わいます。司馬遼太郎は「日本七名城の一つ」(『街道をゆく-北のまほろば』/朝日文庫)としています。
青森県弘前市
陸奥国
根城
甲斐国に所領を有した南部師行(なんぶもろゆき)が、新田義貞の鎌倉攻め、後醍醐天皇の建武の新政に加わり、陸奥守北畠顕家に従って後醍醐天皇の皇子の義良親王(後村上天皇)を奉じて陸奥国多賀城(現・宮城県多賀城市)に下向。さらに八戸を拠点に根城を築城。中世の平山城は、本丸部分の建築物が復元されています。
青森県八戸市
陸奥国
岩手県
岩手県は江戸時代には、伊達藩北部と南部藩南部。南部(盛岡)藩南部氏の居城となったのが現在の県庁所在地である盛岡市にある盛岡城です。土塁の多いみちのくの城郭のなかでは巨大な石垣組の城郭に注目。建造物は現存していませんが見事な石垣が往時を偲ばせてくれます。
盛岡城
岩手県盛岡市
陸奥国
宮城県
古代に陸奥国の国府が置かれたのが宮城県。古墳時代にはすでに奈良にあった王権の支配下にあったエリアで、藩政時代には仙台城が仙台藩の藩庁に。伊達政宗は、豊臣家や徳川家への防御の要として天然の要害である青葉山に仙台城を築いたのです。戊辰戦争の際に奥羽越列藩同盟の拠点としても機能しています。
多賀城
古代の陸奥国の国府が置かれ、大和朝廷の前線基地となったのが多賀城です。創建は724(神亀元)年、その後、貞観の大地震、津波などで被害を受け、10世紀後半には機能を失っています。
宮城県多賀城市
陸奥国
仙台城
伊達政宗が青葉山に築いた東北の名城。徳川将軍家の警戒を受けないため、天守は築かれませんでした。大手門脇櫓などが復元され、本丸の政宗公騎馬像の前に立てば、伊達政宗と同じ視線で、城下を眺望できる仕組み。
宮城県仙台市
陸奥国
秋田県
藩政時代には久保田藩(秋田藩)の藩庁が置かれたのが久保田城。関ヶ原の戦いで西軍に内通していた佐竹義宣(さたけよしのぶ)が常陸国から転封され、久保田藩を立藩したのが始まりです。横手城、大館城などが支城です。ちなみに、古代に出羽国府が置かれたのが秋田城で、久保田城と秋田城は時代も場所も異なる城です。
久保田城
久保田藩主佐竹氏の居城。石垣ではなく土塁を築いて防御とした城です。天守もなく、「出し御書院」と呼ばれる櫓座敷が代用天守でした。御物頭御番所が現存し、本丸新兵具隅櫓(御隅櫓)、本丸表門が復元されています。
秋田県秋田市
出羽国
山形県
藩政時代には、山形藩、庄内藩、新庄藩、上山藩、米沢藩、天童藩、長瀞藩(現・東根市)、出羽松山藩(現・酒田市)などがあり、米沢藩の上杉鷹山、庄内藩の清河八郎などを輩出しています。「日本100名城」に選出されるのは、山形藩の藩庁、山形城です。
山形城
霞ヶ城(かすみがじょう)とも呼ばれ、二の丸跡が霞城公園として整備されています。もともとは最上義光(もがみよしあき)の築城。日本国内では5番目の広さを誇った城ですが、実際には目まぐるしく変わる藩主、さらには厳しい藩財政であまり手入れが行き届かない城郭でした。二ノ丸の御三階櫓が代用天守。二の丸東大手門、本丸一文字門などが復元されています。
山形県山形市
出羽国
福島県
藩政時代には会津藩、二本松藩、白河藩、棚倉藩、中村藩、三春藩、磐城平藩、福島藩、泉藩、湯長谷藩、下手渡藩などがあった福島県。「日本100名城」選出は、会津藩の若松城、二本松藩の二本松城、そして白河藩の白河小峰城です。
二本松城
江戸時代は二本松藩の藩庁となった平山城。標高345mの白旗が峰に城郭が築かれています。山頂に本丸がはいされ、穴太積みの石垣で組まれた天守台があります。
福島県二本松市
陸奥国(岩代国)
若松城
戊辰戦争の白虎隊で知られる若松城。江戸時代には会津松平家の居城で、戊辰戦争の際に天守は消失を免れましたが、明治7年に陸軍が解体。現存する天守は昭和40年に再建された復興天守。
福島県会津若松市
陸奥国
白河小峰城
盛岡城、若松城と共に「東北三名城」に数えられる総石垣造りの美しい城。戊辰戦争で奥羽越列藩同盟軍と新政府軍との攻防の地となって焼失。代用天守の御三階櫓などが復元されています。
福島県白河市
陸奥国
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