渡辺さんのルーツを探せ!

渡辺という苗字のルーツは、他の苗字のように全国いろいろな場所で発祥した苗字と違って、特定の1ヶ所から発祥している。
わずか1ヶ所の地名から生まれた姓がこれほど全国に広がるなんて、これはすごいことだ。
その場所はどこなのか?
大阪のど真ん中の船場だ。

全国の渡辺さんのルーツは大阪に!

地下鉄の本町駅で降り、御堂筋の方から入っていけば、丁度南御堂と伊藤忠の裏側に面した所に大小三つの鳥居が横に組み合わさった珍しい三鳥居が見える。
ビルに囲まれたその神社が渡辺姓の発祥地という坐摩神社だ。
正式には「いかすり神社」というらしいが、たいていは「ざま神社」と呼ばれている。

この神社のある所がかつての渡辺の地で、渡辺姓のルーツの地。
ではこの神社の地名は現在も当然渡辺か?
摂津国一之宮の坐摩神社。大阪府大阪市中央区久太郎町4丁目渡辺3号というのが神社の住所だ。

少し前の姓氏事典には、渡辺姓の発祥地を摂津国西成郡渡辺、現在の大阪市東区渡辺町であると書いてあった。
しかし、最近の本には、現在は渡辺という地名はないなどとも書かれていたりする。
そこで神社の住所を調べてみると「久太郎町四丁目渡辺」と、番地の代わりに渡辺がついている。

元はこの一帯は渡辺町だったのだが、昭和63年の地区統合に伴う地名変更の際、渡辺町は消える予定であったが、渡辺の名の消滅に対し反対が強く、丁目の次の番地の代わりに渡辺の名を残すことで決着をみたという。

──かつてここの社地は、渡辺津といわれて栄えた淀川河口の港町であった(羽柴秀吉の大坂城建設で渡辺津から現社地へ遷座=旧社地には坐摩神社行宮が残されています)。
左大臣源融(とおる)を祖とする嵯峨源氏の源綱が渡辺津に住んでこの神社を掌り、渡辺綱と名乗って渡辺氏の祖となったのである。
神楽にも登場する源頼光(みなもとのよりみつ)に仕えた渡辺綱は四天王随一の豪傑で、京の一条戻り橋で鬼の片腕を切り落としたことで知られている。

というわけで、全国の渡辺さんは、節分に豆まきをする必要がまったくない! なぜなら、渡辺さんを恐れて、鬼も寄り付かないからなのだ。

大阪市都島区善源寺町は、源頼光が支配する荘園・善源寺荘の跡。この荘園の管理をまかされていた渡辺綱が神社に詣でるとき、いつも馬をつないだ渡辺綱・駒つなぎの樟もあったが、戦災にあい、現在は枯死している。

渡辺綱・駒つなぎの樟
渡辺綱・駒つなぎの樟

さらに、渡辺綱の子孫の渡辺党は源頼政の配下として活躍、南北朝から戦国期にかけて各地を転戦し、その戦いぶりは勇猛をもって知られた。
この系統は戦国末期、武田・今川・織田・徳川・毛利など有力戦国武将に仕え、また、肥後の松浦党などの水軍として、渡辺氏は全国に広まっていった。
徳川十六神将のひとり、渡辺守綱(わたなべもりつな)は、三河国額田郡浦部村(現在の愛知県岡崎市)出身。家康に仕え、「槍半蔵」と呼ばれる槍の名手。
後裔は尾張藩の家老などとして活躍し、さらに紀州徳川家の家老を務めた渡辺若狭守家及び渡辺主水家も渡辺守綱の流れ。
愛知県や和歌山県の渡辺さんのルーツといえよう。

「嵯峨源氏の後裔十六世。武田氏に仕えて功あり」と『甲斐国志』に記され、古くから甲斐の豪族として勢力を誇っていた渡辺氏は、現在でも山梨で大姓一位を占め、栃木、新潟、静岡では2位となっている。また、東北地方や愛媛、島根などで「渡部」姓も多く見かけるようだ。

苗字のルーツがひとつだけというだけではなく、渡辺姓の家紋も通称「渡辺星」と呼ばれる、三つ星に一文字がメイン。

渡辺さんの家紋は、他に、三つ星、重ね三つ星、丸に三つ星、渡辺扇、柏、蛇の目、笹竜胆、月に夕顔なども見かけるが、ほとんどは三つ星に一文字の渡辺星で、この家紋は渡辺氏の独占紋である。三つ星に一文字は、戦場における一番槍、一番乗りを意味し、また、一文字は「カツ」とも呼ばれ、いかにも武人らしい家紋となっている。
三田の慶応大学裏にある「綱坂」に、渡辺綱誕生の地という碑が立っている。
渡辺さんなら必踏の地といえよう。

坐摩神社行宮

坐摩神社行宮

2018年2月13日
坐摩神社

坐摩神社

2018年2月13日

渡辺綱

渡辺綱(わたなべのつな/953年~1025年)は、平安時代の武将。
嵯峨源氏の源融の子孫で、正式な名は源綱(みなもとのつな)。
坂田公時、平貞道、卜部季武とならんで「源頼光の四天王」と称された。
大江山の酒呑童子退治や羅生門の茨城童子の腕を切り落とした逸話は神楽などでも有名。
くどいようですが、渡辺さんは、鬼が寄り付かないため節分にも豆まき不要です。
武蔵国足立郡箕田郷(現・埼玉県鴻巣市)に生まれる。
摂津国西成郡渡辺(現在の大阪市中央区久太郎町4丁目渡辺)は母方の故郷。
源満仲の娘婿である仁明源氏の源敦の養子となり、摂津に住み、渡辺源次綱(わたなべのげんじつな)と称して渡辺氏の祖となった。
兵庫県川西市西畦野の小童寺の境内に綱の霊廟がある。東京都港区三田2丁目の綱坂は、付近が渡辺綱の出生地という伝承から。
長運寺(港区三田4-1-9)には渡辺綱大明神像があり、渡辺綱の額が寺宝として保存されている。
事実とすれば、ここも渡辺さんのルーツのひとつだ。

鬼の腕を切り取った渡辺綱

 

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