日本国内に現存する路面電車は、全国17都市20事業者、路線延長では200kmを超えます。超低床電車(LRV)や観光レトロ電車の導入、そしてLRT(次世代型路面電車システム)の誕生で、宇都宮など新たな路面電車も計画中です。全国18事業者22路線を紹介します。
札幌市電
運行地:北海道札幌市
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:8.905km
事業者:札幌市交通事業振興公社
歴史:大正7年8月12日、札幌電気軌道として東2丁目〜西15丁目が開業、昭和2年に札幌市営化
超低床電車(LRV):A1200形(3車体連接)=愛称は「ポラリス」、1100形(A1200形を単車タイプにしたもの)=愛称は「シリウス」
備考:日本最北端の路面電車
冬季に除雪のために運転される「ササラ電車」は冬の風物詩
函館市電とともに北海道遺産に認定
函館市電
運行地:北海道函館市
軌間:4ft6in(1372mm)/馬車軌間
路線距離:10.9km
事業者:函館市企業局交通部
歴史:明治30年12月12日、亀函馬車鉄道が弁天町(後の函館どつく前)〜東川町(後の東雲町)間を開業、昭和18年に函館市営化
超低床電車(LRV):9600形(2車体連接)=愛称は「らっくる号」
備考:30形「箱館ハイカラ號」は、成宗電気軌道(現・千葉県成田市の路面電車)が大正7年、市営化前の函館水電で譲渡、旅客車で営業後、ササラ電車への改造され、平成4年の函館市市制施行70周年記念事業の一環として旅客車時代の図面を元に復元したもの
札幌市電とともに北海道遺産に認定
東京さくらトラム(都電荒川線)
運行地:東京都荒川区、北区、豊島区、新宿区
軌間:4ft6in(1372mm)/馬車軌間
路線距離:12.2km
事業者:東京都交通局
歴史:明治44年8月20日、飛鳥山上(現・飛鳥山)〜大塚で、王子電気軌道が開業、昭和17年2月1日に東京市電に、昭和18年7月1日、都制施行で都電に、平成29年4月28日から東京さくらトラム(Tokyo Sakura Tram)の愛称をメインに使用
超低床電車(LRV):専用軌道の比率が高いことから、超低床電車を用いず、プラットホームの高さを嵩上げすることでバリアフリー化を実現
備考:9000形が明治から昭和初期の東京市電の車両をモチーフにしたレトロ車両で、広告ラッピングもない
東急世田谷線
運行地:東京都世田谷区
軌間:4ft6in(1372mm)/馬車軌間
路線距離:5.0km
事業者:東急電鉄
歴史:大正14年1月18日、玉川電気鉄道(玉電)が三軒茶屋〜世田谷駅(下高井戸線)を開業、昭和13年3月10日に東京横浜電鉄(東急電鉄の前身)に合併され、玉川線に、昭和44年5月11日玉川線の渋谷駅〜二子玉川園駅間が廃止で世田谷線に
超低床電車(LRV):専用軌道の比率が高いことから、超低床電車を用いず、プラットホームの高さを嵩上げすることでバリアフリー化を実現
備考:すべて専用軌道で、併用軌道はありませんが、環七通りと平面交差する場所では、道路と同じ交通信号を使用(電車が信号待ち)
富山市電(富山地方鉄道富山軌道線)
運行地:富山県富山市
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:7.5km
事業者:富山地方鉄道
歴史:大正2年9月1日、『一府八県連合共進会』本会場への足として富山電気軌道が富山駅前〜共進会場前、富山駅前〜総曲輪〜西町を開業、大正9年7月1日に富山市営軌道に、昭和18年1月1日富山地方鉄道に譲渡
超低床電車(LRV):9000形(2車体連接車)=愛称は「CENTRAM(セントラム)」、T100形(3車体連接車)=愛称は「サントラム(SANTRAM)」、富山ライトレールTLR0600形=愛称は「ポートラム(PORTRAM)」
備考:開業以来すべて自社発注の車両のみ導入、さらに令和元年3月21日から南北を接続して富山地方鉄道富山港線(旧・富山ライトレール)と相互直通運転を開始
富山地方鉄道富山港線
運行地:富山県富山市
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:7.7km
事業者:富山地方鉄道
歴史:大正13年7月23日、富岩鉄道の富山口駅〜岩瀬港駅(現・岩瀬浜駅)が開業、富山電気鉄道と合併、さらに富山地方鉄道に社名変更した後、戦時買収で国鉄富山港線に。分割民営化でJR西日本になりますが、平成18年3月1日、第三セクターの富山ライトレールに移管、令和2年2月22日から富山地方鉄道富山港線に
超低床電車(LRV):富山市電(富山地方鉄道富山軌道線)の9000形(2車体連接車)=愛称は「CENTRAM(セントラム)」、T100形(3車体連接車)=愛称は「サントラム(SANTRAM)」、富山ライトレールTLR0600形(2車体2台車連接車)=愛称は「ポートラム(PORTRAM)」
備考:令和元年3月21日から南北を接続して富山市電(富山地方鉄道富山軌道線)と相互直通運転を開始、富山駅停留場から1.2kmが併用軌道
万葉線(高岡軌道線)
運行地:富山県高岡市・射水市
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:12.9km(そのうち新湊港線4.9kmは鉄道路線)
事業者:万葉線(第三セクター)
歴史:昭和5年10月12日、越中鉄道(昭和18年に富山地方鉄道に合併)の西越ノ潟〜 新湊東口(現・東新湊)が開業(新湊港線のルーツ)、昭和23年4月10日、富山地方鉄道が地鉄高岡〜伏木港を開業(高岡軌道線のルーツ)、後に加越能鉄道に譲渡され、平成14年4月1日から第3セクターの万葉線に移管
超低床電車(LRV):MLRV1000形(2車体2台車固定編成)=愛称は「アイトラム(AI-TRAM)」
備考:高岡軌道線(高岡駅停留場〜六渡寺駅)、新湊港線(六渡寺駅〜越ノ潟駅=鉄道区間)は通しで運転され、越ノ潟駅で、富山新港の港口を渡る富山県営渡船に連絡
豊橋市電(豊橋鉄道市内線)
運行地:愛知県豊橋市
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:5.4km
事業者:豊橋鉄道
歴史:大正14年7月14日、豊橋電気軌道が駅前〜神明〜札木十字路、神明〜柳生橋を開業、昭和24年、豊橋交通に社名変更、昭和29年7月22日、豊橋交通が豊橋鉄道に社名変更
超低床電車(LRV):T1000形(3車体連接車)=愛称は「ほっトラム」
備考:豊橋鉄道東田本線が正式名ですが、豊橋鉄道では「豊鉄市内線」と案内
名鉄岐阜市内線・美濃町線、東京都交通局(都電荒川線)などで運転された車両が現役で活躍
福井鉄道福武線
運行地:福井県福井市・越前市
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:21.5km
事業者:福井鉄道
歴史:大正13年2月23日、福武電気鉄道が武生新駅(現・越前武生駅)〜兵営駅(現・神明駅)を開業、昭和20年8月1日、合併で福井鉄道に
超低床電車(LRV):F1000形(3車体連接車)=愛称は「FUKURAM」(フクラム)
備考:赤十字前駅〜商工会議所前停留場間に鉄軌分界点があり、鉄軌分界点〜田原町駅が軌道(路面電車)ですが、通しで急行などが運転され、電車が併用軌間を走る異色の光景も
京阪電気鉄道・石山坂本線
運行地:滋賀県大津市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:14.1km
事業者:京阪電気鉄道
歴史:前身は明治13年7月15日に開業の東海道線馬場〜大津間で、三線軌条化(東海道線は狭軌)して大正2年3月1日、大津電車軌道が大津駅(現・びわ湖浜大津駅)〜 膳所駅(現・膳所本町駅)を開業
超低床電車(LRV):専用軌道の比率が高いことから、運用なし
備考:びわ湖浜大津駅〜三井寺駅間の400mは、道路を走る併用軌道で、4両編成の電車が道路の中央を走行
京阪電気鉄道・京津線
運行地:滋賀県大津市、京都府京都市山科区
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:7.5km
事業者:京阪電気鉄道
歴史:大正元年12月14日、京津電気軌道が三条大橋駅〜上関寺仮乗降場、上関寺駅〜札ノ辻駅を開業(官設鉄道東海道本線を跨ぐ上関寺国鉄跨線橋の建設工事の遅れにより、上関寺仮乗降場〜上関寺駅間の100mが未開通)、その後、太湖汽船と湖南汽船(現在の琵琶湖汽船)との連絡きっぷも発売
超低床電車(LRV):専用軌道の比率が高いことから、運用なし
備考:京都市営地下鉄東西線と直通運転を実施
地下鉄、逢坂山を越える登山電車(専用軌道)、路面電車(併用軌道/上栄町駅〜びわ湖浜大津駅の600m)の3種類を同一車両で走行する日本唯一の電車
京福電気鉄道嵐山本線
運行地:京都府京都市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:7.2km
事業者:京福電気鉄道
歴史:明治43年3月25日、嵐山電車軌道が京都駅(現・四条大宮駅)〜嵐山駅を開業
超低床電車(LRV):専用軌道の比率が高いことから、運用なし
備考:北野線とあわせて嵐山線、嵐電(らんでん)と通称されています
京福電気鉄道北野線
運行地:京都府京都市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:3.8km
事業者:京福電気鉄道
歴史:大正14年11月3日、京都電燈が北野駅〜高雄口駅(現・宇多野駅)を開業
超低床電車(LRV):全線が専用軌道で、運用なし
備考:嵐山本線とあわせて嵐山線、嵐電(らんでん)と通称されています
北野線も軌道線ですが、全線が専用軌道なので、厳密には路面電車とは呼べません
阪堺電気軌道・阪堺線
運行地:大阪府大阪市・堺市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:14.0km
事業者:阪堺電気軌道
歴史:明治44年12月1日、阪堺電気軌道が恵美須町〜市ノ町(現・大小路)を開業
超低床電車(LRV):1001形(3車体連接車)=愛称「堺トラム」、1101形(3車体連接車)
備考:阪堺電気軌道・上町線の電車が住吉停留場〜浜寺駅前停留場に乗り入れ
阪堺電気軌道・上町線
運行地:大阪府大阪市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:4.3km
事業者:阪堺電気軌道
歴史:明治33年9月20日、大阪馬車鉄道が天王寺(後の天王寺西門前)〜東天下茶屋間を開業(軌間1067mm)、明治40年に大阪電車鉄道、浪速電車軌道と改称、明治42年12月24日、南海鉄道が浪速電車軌道を合併し南海鉄道上町線に、昭和19年6月1日、近畿日本鉄道に、昭和22年、南海電気鉄道に、昭和55年12月1日、阪堺電気軌道に
超低床電車(LRV):1001形(3車体連接車)=愛称「堺トラム」、1101形(3車体連接車)
備考:上町線の電車が阪堺電気軌道・阪堺線の住吉停留場〜浜寺駅前停留場に乗り入れ
岡山電気軌道
運行地:岡山県岡山市
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:4.3km
事業者:岡山電気軌道
歴史:明治45年5月5日、岡山電気軌道が駅前〜 内山下分岐、内山下分岐〜後楽園口で開業
超低床電車(LRV):9200形(2車体連接車)=愛称「MOMO」、「MOMO2」
備考:アニメ「チャギントン」を実車化した「おかでんチャギントン」を運行
広島電鉄軌道線
運行地:広島県広島市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:5.4km
事業者:広島電鉄
歴史:大正元年11月23日、広島電気軌道が広島駅前(現・広島駅)〜櫓下(現・原爆ドーム前)が開業
超低床電車(LRV):3950形=愛称「Green Liner(グリーンライナー)」、5000形=愛称「GREEN MOVER(グリーンムーバー)」、5100形=「Green mover max(グリーンムーバーマックス)」、1000形=「GREEN MOVER LEX』(グリーンムーバー・レックス)」
備考:本線、宇品線、江波線(えばせん)、横川線(よこがわせん)、皆実線(みなみせん)、白島線(はくしません)があり、市内線と総称。運行は8系統
動く電車の博物館といわれるほど、多彩な車両があります
とさでん交通(桟橋線・後免線・伊野線)
運行地:高知県高知市、南国市、吾川郡いの町
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:25.3km
事業者:とさでん交通
歴史:明治37年5月2日、土佐電気鉄道が堀詰〜乗出(現・グランド通)、梅ノ辻〜桟橋(現・桟橋車庫前)を開業、平成26年10月1日、土佐電気鉄道、高知県交通、土佐電ドリームサービスの3社が経営統合し、とさでん交通誕生
超低床電車(LRV):100形(3車体連接車)=愛称「ハートラム(Heartram)」、3000形(3車体連接車)=愛称「ハートラムII(Heartram II)」
備考:開業80周年記念事業として製作された7形のレプリカ「維新号」、さらには198形(元ノルウェー・オスロ市電)、320形(元オーストリア・グラーツ市電)、910形(元ポルトガル・リスボン市電)、590形(元名鉄美濃町線)、700形・800形(元山陽電気軌道)など多彩な車両
伊野線の単線区間では路面電車では唯一のタブレット交換を実施
はりまや橋交差点(はりまや橋停留場)は日本に3ヶ所しかないダイヤモンドクロス(平面交差)
後免線の清和学園前停留場〜一条橋停留場との間の距離はわずか63mで、日本一短い駅間距離
伊予鉄道松山市内線
運行地:愛媛県松山市
軌間:3ft6in(1067mm)/狭軌
路線距離:9.6km
事業者:伊予鉄道
歴史:明治28年8月22日、道後鉄道が、古町〜道後(現・道後温泉)〜松山(現・大街道付近)を開業したのが始まり、昭和44年12月1日、松山市内線環状運転を開始、平成13年10月12日、「坊っちゃん列車」運行開始
超低床電車(LRV):モハ2100形、モハ5000形(アルナ車両のリトルダンサータイプS)
備考:「坊っちゃん」時代(明治時代)の蒸気機関車と車両をイメージした「坊っちゃん列車」(SL風のディーゼル機関車で牽引)を道後温泉へ運転
路面電車と郊外線(鉄道)の平面交差(ダイヤモンドクロス)がある
長崎市電(長崎電気軌道)
運行地:長崎県長崎市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:11.5km
事業者:長崎電気軌道
歴史:大正4年11月16日、長崎電気軌道が病院下〜 築町を開業
超低床電車(LRV):3000形(3車体連接車)、5000形(3車体連接車)
備考:本線、赤迫支線、桜町支線、大浦支線、蛍茶屋支線があり、1号系統〜5号系統の5系統で運行
熊本市電
運行地:熊本県熊本市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:11.5km
事業者:熊本市交通局
歴史:大正13年8月1日、熊本市電車部が熊本駅前〜浄行寺町、水道町〜水前寺を開業
超低床電車(LRV):9700形(2車体連接車)、0800形(2車体連接車)
備考:幹線、水前寺線、健軍線(けんぐんせん)、上熊本線、田崎線があり、A系統(通称・Aライン)、B系統(通称・Bライン)の2系統で運転
平成9)8月に営業運転を開始した9700形は、日本で初めての超低床電車
熊本市電開業90周年記念の導入された0803ABは水戸岡鋭治のデザインで愛称は「COCORO(こころ)」
鹿児島市電
運行地:鹿児島県鹿児島市
軌間:4ft8.5in(1435mm)/標準軌
路線距離:13.1km
事業者:鹿児島市交通局
歴史:大正元年12月1日、鹿児島電気軌道が武之橋〜谷山を開業、昭和3年7月1日、 鹿児島市が鹿児島電気軌道を買収
超低床電車(LRV):1000形(3連接連接車)=愛称「ユートラム」、7000形(5連接連接車)=愛称「ユートラムII」、7500形(2連接構造)=愛称「ユートラムIII」
備考:日本最南端の路面電車
第一期線、第二期線、谷山線、唐湊線(とそせん)があり、1系統(青)、2系統(赤)の2系統で運転
100形(2代目)は、観光レトロ電車
軌道敷緑化整備事業で、併用区間に芝が植栽されているため、芝刈り電車(500形512号散水電車 + 芝刈り電車)が運行
日本の路面電車 22路線 徹底紹介 | |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag